時代に取り残されたレガシーシステム。その複雑怪奇な実態と、企業の未来を阻む深刻なリスクについて解説します。でも、ご安心を。モダナイゼーションによるクラウド移行という道があるのです。レガシーシステムの呪縛から解き放たれ、俊敏性と拡張性を取り戻す方法とは? 富士通やNECの先進事例も交えながら、DX時代を勝ち抜くための処方箋をお届けしましょう。
- レガシーシステムの問題点と、それがもたらすビジネスリスク
- リプレース、マイグレーション、モダナイゼーションという3つの脱却方法
- モダナイゼーションの具体的な手法と、もたらされるメリット
- 富士通やNECの事例から学ぶ、成功へのポイント
レガシーシステムからの脱却とモダナイゼーションによるクラウド移行
レガシーシステムは、複雑化・ブラックボックス化が進み、年間最大12兆円の経済損失をもたらす可能性があります。しかし、モダナイゼーションによるクラウド移行で、その呪縛から解放されます。マイクロサービス化やコンテナ技術を活用し、俊敏性と拡張性を獲得。DXの実現に向けた確かな一歩を踏み出せるでしょう。
レガシーシステムとは
そもそもレガシーシステムって何なの?
レガシーシステムとは、古い技術や仕組みで構築された、時代遅れのシステムのことを指すんだ。
レガシーシステムの代表例は、1980年代に導入されたメインフレームやオフコンを使った基幹システムです。
これらのシステムは、独自のOSやCOBOLなどの古いプログラミング言語で開発され、その会社の業務に合わせてカスタマイズされています。
ただ、レガシーシステムは単に古いだけではありません。システムの複雑化や肥大化が進み、ブラックボックス化していることが大きな特徴です。
そのため、システムの変更や拡張が困難であり、新しい技術や機能の導入が難しくなっています。
レガシーシステムは、古くて使いにくそうだね…。
そうなんだ。でも、なかなか簡単には替えられないのが現実なんだよ。
レガシーシステムは、長年にわたって企業の業務を支えてきた存在です。そのため、いきなり全面刷新するのは難しいのです。また、レガシーシステムには、その企業独自のノウハウや業務ロジックが詰まっています。それをいかに新しいシステムに継承するかも、大きな課題となります。
レガシーシステムからの脱却は、大変そうだね…。
確かに大変だけど、避けては通れない課題なんだ。デジタル時代を生き抜くためには、レガシーシステムをどう進化させるかが鍵になるんだよ。
レガシーシステムの問題点
レガシーシステムって、どんな問題があるの?
レガシーシステムには、大きく分けて4つの問題点があるよ。
1. 維持コストの増大
2. 拡張性の欠如
3. セキュリティリスク
4. 属人化とブラックボックス化
レガシーシステムの維持コストは、年々増加傾向にあります。古い技術を理解できる人材が限られているため、人件費も高騰しているのです。
また、レガシーシステムはモノリシック構造で作られているため、一部の変更が全体に影響を及ぼすリスクがあります。新サービスの展開や業務プロセスの改善が遅れ、ビジネスチャンスを逃してしまう可能性もあるでしょう。
セキュリティ面でも、レガシーシステムは最新の基準に適合していないことが多いため、脆弱性を突かれるリスクが高いと言えます。
さらに、レガシーシステムは特定の担当者しか内容を理解していないケースが多く、ノウハウが失われるリスクもはらんでいます。
レガシーシステムって、大変なんだね…。
そうなの。だから、企業はレガシーシステムから脱却して、モダンなシステムへの移行を進めているんだ。
経済産業省の試算では、2025年以降、レガシーシステムが原因で最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるとされています。
レガシーシステムの問題点を認識し、適切な対策を講じることが、企業の競争力維持には欠かせません。
レガシーシステム脱却の方法
レガシーシステムから脱却するには、どんな方法があるの?
主に3つの方法があるよ。
1. リプレース
2. マイグレーション
3. モダナイゼーション
リプレースは、既存のシステムを全面的に刷新し、新しいシステムに置き換える方法です。問題点を根本から解決できますが、コストと時間がかかるのが難点でしょう。
マイグレーションは、既存のシステムをできるだけそのままの形で、新しい環境に移行する方法です。例えば、オンプレミスのシステムをクラウドに移すような場合が該当します。コストを抑えられますが、根本的な問題解決にはならない可能性があります。
モダナイゼーションは、既存のシステムを段階的に刷新していく方法です。システムの基本構造は維持しつつ、古い部分を少しずつ置き換えていくイメージです。全面刷新よりもコストを抑えつつ、既存の問題点も解消できるのが利点です。
なるほど、3つの方法があるんだね。
そう。それぞれにメリット・デメリットがあるから、自社に合った方法を選ぶことが大切なんだ。
企業の状況に応じて、これらの方法を適切に組み合わせることが重要です。例えば、基幹システムの一部をマイグレーションで移行しつつ、段階的にモダナイゼーションを進めていくといった具合です。
いずれにしても、レガシーシステム脱却には綿密な計画と、経営層を巻き込んだ全社的な取り組みが不可欠となるでしょう。
レガシーモダナイゼーションとは
レガシーモダナイゼーションって何?
レガシーモダナイゼーションとは、古い資産を活かしつつ、クラウドやマイクロサービスなどの新技術を取り入れてシステムを刷新していくプロセスのことだよ。
レガシーモダナイゼーションには、主に以下のような手法があります。
1. リファクタリング:プログラムの内部構造を改善し、保守性を高める
2. API化:レガシーシステムの機能をAPIを介して外部に公開する
3. マイクロサービス化:モノリシックなシステムを小さなサービスに分割する
4. クラウド移行:オンプレミスのシステムをクラウド環境に移行する
これらの手法を適切に組み合わせることで、レガシーシステムの問題点を段階的に解消し、モダンなシステムへと進化させられます。
じゃあ、レガシーモダナイゼーションをすれば、古いシステムも使えるようになるんだね!
そういうこと。でも、レガシーモダナイゼーションにも課題はあるんだ。
例えば、既存のビジネスロジックを新しい環境に移行する際には、十分なテストが必要です。また、移行期間中は新旧のシステムが並存することになるため、データの整合性を保つ仕組みづくりも欠かせません。
ただ、これらの課題を乗り越えることで、レガシーシステムに内在するリスクを最小化しつつ、DXを加速させる基盤を構築できるでしょう。
レガシーモダナイゼーション、大変そうだけど、やりがいがありそうだね!
そうだね。でも、正しいアプローチを選べば、きっと大丈夫。レガシーシステムも、まだまだ可能性を秘めているんだから。
モダナイゼーションをわかりやすく解説
モダナイゼーションとは、レガシーシステムを段階的に刷新し、クラウドやマイクロサービスなどの最新技術を取り入れることです。リファクタリングやAPI化、コンテナ化など、様々な手法を組み合わせることで、システムの俊敏性と拡張性を飛躍的に高められます。大手企業の実践例も交えながら、モダナイゼーションの基本概念から具体的なアプローチまでを、分かりやすく解き明かします。
モダナイゼーションとは
モダナイゼーションって、難しそうだけど、簡単に説明してくれない?
うん、わかりやすく説明してみるね。モダナイゼーションとは、古いシステムを新しい技術で刷新することだよ。
モダナイゼーションのメリットは主に3つあります。
1. 俊敏性の向上:マイクロサービスやクラウドを活用することで、システムの変更や拡張が容易になります。
2. コスト削減:クラウド移行によって、インフラ管理のコストを大幅に削減できます。
3. 人材の有効活用:最新技術を導入することで、若手エンジニアにとって魅力的な環境を作れます。
ただし、移行コストと時間がかかるのがデメリットです。レガシーシステムの規模が大きいほど、刷新には膨大なリソースが必要になります。
なるほど、メリットもあるけど、大変そうだね…。
そうなんだ。だから、モダナイゼーションを進める際は、綿密な計画が大切になるんだよ。
例えば、自社のビジネス戦略に沿って、優先順位を決めていく必要があります。競争力強化に直結する分野から刷新を始めるのも一つの方法でしょう。また、社内のIT人材だけでは対応しきれない場合は、外部パートナーの力を借りることも検討すべきです。
モダナイゼーションに豊富な経験を持つベンダーと協力することで、リスクを最小限に抑えつつ、効率的に進められる可能性があります。
じゃあ、モダナイゼーションは、ただシステムを新しくするだけじゃないんだね。
そうだね。ビジネスとITを繋ぐ架け橋になるんだ。だから、長期的な視点を持つことが重要なんだよ。
モダナイゼーションとDXの違い
ねえ、モダナイゼーションとDXって、どう違うの?
モダナイゼーションとDXは、どちらもデジタル化を目指す取り組みだけど、重点の置き方が少し違うんだ。
モダナイゼーションは主に、既存のレガシーシステムを刷新し、モダンな技術に置き換えることに焦点を当てています。古いシステムの問題を解消し、変化に対応しやすいシステムを作ることが目的です。つまり、ITの領域に軸足を置いた取り組みと言えるでしょう。
一方、DXは、デジタル技術を活用して、ビジネスモデルそのものを変革することを目指します。業務プロセスや組織文化、さらには顧客体験までを再設計するのが特徴です。ITはその実現手段の一つに過ぎません。
じゃあ、モダナイゼーションはDXの一部ってこと?
そうだね。モダナイゼーションは、DXを実現するための基盤づくりだと言えるよ。
レガシーシステムを刷新し、デジタル技術を取り入れやすい環境を整備することで、DXの実現に近づくのです。ただし、モダナイゼーションだけではDXは実現できません。ビジネス部門とIT部門が一体となって、企業文化や組織のあり方自体を変革していく必要があります。その意味では、DXはモダナイゼーションよりも広範で複雑な取り組みだと言えるでしょう。
なんだか、奥が深そうだね…。
そうだね。でも、モダナイゼーションとDXの違いを理解することは、これからのデジタル時代を生き抜く上で、とても大切なことなんだよ。
モダナイゼーションとマイグレーションの違い
モダナイゼーションとマイグレーションって、どういう違いがあるの?
モダナイゼーションとマイグレーションは、どちらもレガシーシステムの課題解決を目指す取り組みだけど、アプローチの方向性が少し違うんだ。
マイグレーションは、既存のシステムを新しい環境に移行することに主眼を置いています。例えば、オンプレミスで稼働していたシステムをクラウドに移すことがマイグレーションに当たります。この場合、アプリケーションの構造や機能はほとんど変更せずに、実行環境だけを変更するのが一般的です。
マイグレーションのメリットは、比較的短期間で実施でき、コストを抑えられることです。新しい環境の利点を活かしつつ、既存システムの資産を継承できるのが大きな利点と言えるでしょう。
じゃあ、マイグレーションは、システムの中身は変えないんだね。
そうだね。でも、それだと既存システムの構造的な問題までは解決できないんだ。
例えば、モノリシックなアーキテクチャのままクラウドに移行しても、スケーラビリティや柔軟性の向上は期待できません。レガシーシステムに内在する技術的負債は、そのまま引き継がれてしまうのです。
一方、モダナイゼーションは、マイグレーションよりも踏み込んだ取り組みです。単なる環境の移行にとどまらず、システムの構造や機能そのものを刷新するのが特徴です。レガシーシステムの問題点を根本から解決し、ビジネスの変化に即応できるシステムを目指します。
モダナイゼーションは、システムの中身も変えるんだね!
そうだよ。でも、それだけに時間とコストがかかるのがネックなんだ。
モダナイゼーションは、マイグレーションと比べると一般的に長い時間を要します。既存システムの理解と分析に労力を要するうえ、刷新後のシステムの検証にも手間がかかるためです。
さらに、既存の業務プロセスや組織文化との摩擦も生じる可能性があります。したがって、モダナイゼーションを進める際は、綿密な計画と十分なリソースの確保が不可欠です。ビジネス部門とIT部門が一丸となって取り組む必要があるでしょう。
モダナイゼーションは大変そうだけど、やりがいがありそうだね!
そうだね。マイグレーションとモダナイゼーションのメリット・デメリットを理解して、自社に最適なアプローチを選ぶことが大切なんだ。
モダナイゼーションによるレガシーシステムのクラウド移行事例
富士通は独自開発の自動変換ツールを駆使し、COBOLからJavaへの移行を実現。NECは綿密なアセスメントと段階的なアプローチで、大手製造業のシステム運用コストを40%削減しました。2社の先進的な取り組みから、レガシーシステムのクラウド移行を成功に導く勝利の方程式が見えてきます。移行戦略の立案から、ツールの選定、体制づくりまで、実践的なノウハウが満載です。
富士通のモダナイゼーション事例
富士通はどんなふうにモダナイゼーションに取り組んでいるの?
富士通は、自社のレガシーシステムである『GLOVIAシリーズ』のオープン化に力を入れているんだよ。
GLOVIAは、富士通の基幹業務パッケージとして長年利用されてきましたが、メインフレーム環境ゆえの柔軟性の欠如が課題となっていました。そこで富士通は、GLOVIAをJavaベースのオープンシステムに移行するプロジェクトを開始。2004年には、オープン版の「GLOVIA smart」をリリースしました。
移行に際しては、COBOLで書かれた既存のコードをJavaに自動変換するツールを独自に開発。膨大なコード資産を効率的に移行することに成功しました。また、パッケージの機能をコンポーネント化し、柔軟な組み合わせを可能にしたのも特徴です。
自動変換ツールを作るなんて、すごいね!
そうだね。この取り組みによって、GLOVIAの拡張性や相互運用性が大きく向上したんだ。
富士通は、この経験を活かして、他社のレガシーシステムのモダナイゼーションも支援しています。2018年には、メインフレームのクラウド移行を支援する「Mainframeマイグレーションファクトリ」の提供を開始。
直近では、大手流通企業のメインフレームシステムを、富士通のパブリッククラウド「FUJITSU Cloud Service for OSS」に移行。バッチ処理の高速化や、システム基盤の統合・標準化を実現した事例も報告されています。
富士通は、自社の経験を他社の支援にも活かしているんだね!
そうだね。レガシーシステムのモダナイゼーションは、一社だけの問題じゃないからね。業界全体で知見を共有していくことが大切なんだ。
NECのモダナイゼーション事例
NECはどんなモダナイゼーションをしているの?
NECは、『システムモダナイゼーション』というサービスを提供していて、メインフレームやUNIXサーバー上の基幹システムを、オープン系システムやクラウドに移行するソリューションを提案しているんだ。
NECのアプローチの特徴は、既存システムのアセスメントに力を入れている点です。移行対象のシステムについて、ソースコードやデータベースの分析を徹底的に行い、最適な移行方式を策定。リスクを最小限に抑えつつ、移行コストの最適化を図っています。
例えば、ある大手製造業のケースでは、NECのアセスメントにより、既存システムの約7割がクラウド移行に適していることが判明。残りの3割についても、機能のスリム化や、SaaS型サービスへの置き換えを提案。結果として、システム運用コストを約40%削減することに成功しました。
アセスメントって、大事なんだね!
そうだね。システムの特性をしっかり見極めることが、成功のカギを握っているんだ。
また、NECでは、既存システムの資産を活かしつつモダナイズを進める「ブリッジモダナイゼーション」という手法も提唱しています。例えば、メインフレーム上のCOBOLアプリケーションについて、JavaへのコンバージョンとCOBOLでの並行開発を組み合わせる方法です。これにより、既存のCOBOL資産を段階的にモダナイズしつつ、並行して新機能の開発も進められます。移行リスクを最小限に抑えつつ、システムの刷新を加速できるのが利点です。
古いシステムも、ちょっとずつ直していけばいいんだね!
そういうこと。レガシーシステムのモダナイゼーションは、一朝一夕にはいかないけど、着実に進めていくことが大切なんだよ。
モダナイゼーションで実現するクラウド移行と新たな未来:まとめ
レガシーシステムは、複雑化・ブラックボックス化が進み、企業のデジタル化の足かせになっています。しかし、モダナイゼーションによって、段階的にクラウドへ移行し、システムの柔軟性と拡張性を取り戻すことができます。富士通やNECの事例から学ぶべきことは多く、DX実現への道筋が見えてきます。レガシーシステムの呪縛から解き放たれ、新たな時代を切り拓くチャンスは、今まさにあなたの目の前にあるのです。
この記事についてのポイントをまとめます
・レガシーシステムは、古い技術で構築され、複雑化・ブラックボックス化が進んでいるシステムである
・レガシーシステムは、維持コストの増大、拡張性の欠如、セキュリティリスク、属人化などの問題点がある
・レガシーシステムからの脱却には、リプレース、マイグレーション、モダナイゼーションの3つの方法がある
・レガシーモダナイゼーションとは、古い資産を活かしつつ、新技術を取り入れてシステムを刷新するプロセスである
・モダナイゼーションは、レガシーシステムの問題点を解消し、俊敏性、コスト削減、人材活用などのメリットをもたらす
・モダナイゼーションはDXの基盤づくりであり、ITとビジネスを繋ぐ役割を担っている
・マイグレーションは環境移行に重点を置くのに対し、モダナイゼーションはシステムの構造や機能そのものの刷新を目指す
・富士通は自社のレガシーシステム「GLOVIA」をJavaベースのオープンシステムに移行し、他社支援にも活かしている
・NECは綿密なアセスメントと段階的なアプローチで、大手企業のレガシーシステムのクラウド移行を支援している
・レガシーシステムのモダナイゼーションは、DX実現と競争力強化に不可欠な取り組みである